フランスというと、バカンスが充実していて、出生率もヨーロッパでトップ。そんな恵まれている(ように見える)国で、いったい女性達はどんな働き方をしているの?と興味津々の方も多いのではないでしょうか。
フランスでは、25歳から49歳までのフランス人女性の83.8%が何らかの仕事に就いている、または就活中であるということです(2014年のINSEE/フランス国立統計経済研究所の統計より)。つまり子育て世代の女性のほとんどが働いています。それでいて、出生率もヨーロッパ一の1.96(2015年のINSEEの統計、2014年は2.0)。「子育てもしながら仕事も続けるなんて、フランス人女性はスーパーウーマンなのかしら」「やさしい旦那さんが家事や育児をたくさん手伝ってくれるじゃないの?」と思わずにはいられません。
では彼女たちの一日を見て見ましょう。
2歳半の子供を持つ、あるフランス人女性の1日
6時起床:自分と子供の身支度、朝食。
7時15分:家を出て、ベビーシッターの家に子供を預けた後仕事に向かう。
18時15分:子供をピックアップ。
18時30分:帰宅。子供と15分程度遊んだあと、お風呂に入れ、食事をさせる。
19時45分:夫帰宅。
20時:子供を寝かせる。
それから食事の支度をして夫と一緒に食べ、話をしたりテレビを見る。明日の準備をして、食器洗い機をセットしたら就寝。
別のシングルマザー(娘は4歳半)の一日
5時45分:起床、子供を起こす前に自分の身支度を済ませる。
6時40分:娘を起こす。朝ごはん、着替えをさせる。
7時30分:家を出て、幼稚園が開くまで預かってくれる託児所へ娘を連れて行く(水曜日は幼稚園がお休みなので、学童へ預ける)。それから45km離れた仕事場へ急ぐ。
8時30分:仕事開始。
17時:仕事を終え、娘のお迎えに向かう。
18時:娘をピックアップ。そのあと一緒に食事の買い物等。
18時半:帰宅。すぐに娘をお風呂に入れ、食事の準備をしている間は娘の遊び時間。ふたりで食事。
20時15分:娘をベッドに連れていき、本を読んであげる。
20時30分:娘就寝。
その後、食事の後片づけをして翌日の準備をしたら、ベッドに入り、テレビをつけたまま9時半に寝てしまうこともしばしば…。
このように、忙しい毎日は日本人のワーキングマザーとあまり変わりはありません。フランスでは男性が育児や家事をたくさん手伝ってくれる、というイメージが強いですが、すべての家庭でそうだとは限りません。旦那さんの勤務地が自宅から近い場合には、学校まで朝連れて行ってくれる場合もありますが、まだ赤ちゃんのうちは女性が朝晩の送り迎えを担当する場合もかなりあります。このような余裕のない毎日にストレスや罪悪感をおぼえる女性は多く、「仕事と家庭をどうやって両立するか」という悩みは、フランスの女性誌によく登場するテーマのひとつです。
では、彼女たちはどうやってこれを乗り切っているのでしょうか。
まず、子供を持った女性はフルタイム勤務から時短労働に切り替えることも多いです。日本と異なるのは時短労働でも正社員と条件が変わらないことです。また子供が幼稚園にあがると、水曜日は学校がお休みだったり午前中終わりなので、会社に水曜日をお休みにしてもらうこともあります。また、2人や3人の子供のお迎えをうまくコーディネートするために、シッターさんを2人雇ったり、少しでも家事が楽になるように家事サポート会社にヘルパーさんを派遣してもらったり。もちろん、母親や兄弟が近くに住んでいる場合には、家族にも最大限に頼ります。とにかく、彼女たちは両立に必至です。お給料の半分がベビーシッター代に消えることもしばしば(例えば、自宅でシッターさんを雇った場合のシッターさんのお給料は平均1500€(約17万円)/月)。幸いなことに、ベビーシッターや家事ヘルパーを雇用した場合には、その金額の最大50%までが税金から控除されるので、税金対策になります。
自分の年金の心配もありますし、カップルや夫婦だっていつ別れるか分からない。ましては、子供を預けて仕事を続ける女性への風当たりが強いお隣のドイツなどに比べると、フランスの女性は「仕事か家庭か」を選ぶ必要がありません。
経済的にも精神的にも常に自立していたフランス人女性たちは、周りの援助を最大限に使いながら働いています。そして夏や冬には、法律で定められた年間で5週間の有給休暇をばっちり取って、日頃の疲れを家族と共にめいっぱい癒すのです。
ライター Zoé(ゾエ)
パリ、東京、ブエノスアイレスで暮らし、現在はバンコク在住。
さまざまな国の女性とおしゃべりをし、その国独特の女性の考え方や価値観を知るのが大好き。