世界各国の女性の学び、キャリアや働き方、結婚・出産、子育て、女性を取り巻く環境やライフスタイルについてご紹介します。
スペインでは、ほとんどが国公立大学で、年間の学費が約1000ユーロと、日本と比べて学費が安いというメリットもありますが、一般企業に就職するためには、専門的な知識が必要なので、大学進学率は43%と日本の41%よりも高く、男女の学生内比率も女子が52%と男子学生よりも多くなっています。大卒者は、主にデスクワークなどの事務職や専門職につき、高卒者は、パートタイムで働くのが主流です。
日本のように就職するために大学を出るということは少なく、将来就きたい仕事があり、そのための勉強するために大学へ進学するという、志が高い学生が多いようです。
現在のスペインは、不動産バブルが崩壊し、厳しい就職難です。少しでも仕事に就けるようにと、ケンブリッジの英語検定資格を取る人たちが急激に増え、特に時間に余裕のある、多くの女性たちが英語を習っています。また、先の見えない不況の中、国内で仕事を見つけるのは困難なので、外国で働くためにも英語を習うという動きが、スペイン中で起きています。
これは女性に限らず、小学校から多くの公立学校もバイリンガル教育を始めています。しかし、日本のように外国語を取得するために留学するということは、収入が日本と比べて大差があるスペインでは、あまりありません。
英語以外にも全てに学費の安いスペインですので、語学以外にも習い事をしている女性は多いです。ただ、日本のように資格取得目的のみの講座というのは、あまりなく、あくまでも趣味の範囲内が多いようです。パッチワークなどを個人で習う人もいれば、市が主催して、料理、絵画、スポーツ音楽などの多彩な教室を 開いているのところも多いので、気軽にお稽古事を楽しめる環境にあるといえます。
スペインでは、2007年に実践的男女平等法が制定されて以降、男女差が縮まりつつあり、現在では仕事をしている人口の42.9%が女性です。そして、スペインの女性が、結婚後も働く人が多いという、もうひとつの大きな理由に、スペインの収入が低いということがあります。
一般的な男性でも、月収が2000ユーロを上回る人は多くなく、共働きでないと経済的に家庭を切り盛りするのが難しいというのが実情です。そのような経済 事情なので、昔の日本のように「女性は結婚したら家にいる」という考えは、現在のスペインではなく、男性も女性が働くことに賛成しています。
スペインの主な労働時間帯は9時~14時、昼休みをはさんで17時~21時と日本とはだいぶ異なっていて、残業がしにくい時間帯で働いています。そのためか、日本のように多くの男性が遅くまでサービス残業をするということがないので、男女ともに同じような雇用形態、環境が多いです。産業別に見ると、教育関係、医療従事者に占める女性の比率が男性より高くなっています。
また、自分で起業する女性も多いです。女性の医師の開業医も多く、美容院、エステティックサロンなどの専門職の人は、個人で開業することが多いですし、ブティックなども個人で開店する場合が多いです。
スペインでは正式な「結婚」のほかに「事実婚」があります。事実婚は、国に認められた「婚姻」ではないのですが、役所に事実婚届けを出すと、法律的にパー トナーとの関係が認められるものです。正式な結婚とほぼ同じの法的効果があり、例えば、二人の間に子供を儲けた場合、二人の子供と認められ、両親の苗字をつけるので(スペインでは、父親と母親の二つの苗字を名乗ります)、書類手続き重視の「結婚」という枠にとらわれずに、事実婚をするカップルも多いのです。
事実婚では「夫、妻」ではなく、あくまでもパートナーなので「彼氏、彼女」という扱いになります。スペインでの離婚は、精神的にも時間的にも大変で、弁護士を通して裁判所に提出し、離婚完了まで約1年はかかると言われています。また社会保険があり、加入者は公立病院での全ての医療サービスを無料で受けられます。そのため、公立病院で出産する場合、通院費、出産費は無料です。
公立病院で出産した場合、平均出産二日後には退院しますが、日本と違って主に公立病院では、毎晩多くの女性が出産入院するので、より多くの妊婦に対応できるように、平均出産後二日で退院します。日本と違って無痛分娩が主流で、陣痛によるストレスが少なく、体力の消耗も少ない無痛分娩では、その後の育児に余裕がでるともいわれており、短い入院期間でも特 に問題はありません。出産後には、16週の有給育児休暇があります。その後、最長無償で3年間まで申請できますが、元のポストが保障されるのは1年間まで が一般的です。しかし実際には16週の有給育児休暇が終わった後、すぐに職場復帰する女性がほとんどというのが実状です。
スペインでは、行政からの育児補助もなく、日本のように、自治体から派遣される助産婦さんによる産後のサポートケアサービスなどもありません。そのため、 スペインでの子育ては、家族のサポートなしでは成り立ちません。もともと家族との距離が近いスペインですが、子供が生まれるとその距離が更に短くなりま す。結婚をすると女性の実家の近くに住むケースが多いので、出産後は、実家の家族、主に女性の母親が毎日赤ちゃんの世話や、家事を請け負ってくれることが多いです。
働く女性はすぐに職場復帰をするので、子供を小さいうちから保育所に預けながら、実家の家族の助けをかりて、子育てと仕事を両立させています。子供を小さ いうちから他人に預けることが多いので、母乳に執拗に執着することはなく、早いうちから粉ミルクで育てる女性も少なくありません。
実家の両親だけでなく、兄弟たちも積極的に子供を預かることが多く、実家の家族もみんな総出で子育てに参加することが多いです。そのため、母親や周りの人からの育児アドバイスも多く、新米ママが慣れない育児で一人でふさぎこむということはあまりありません。また、もし離婚をした場合、養育権は片親にいきま すが、親権は二人にあります。そのため、裁判所が決めた割合で子供は両親に会うことになり、離婚後も元夫と二人で子育てを続けていくことになります。
スペインの女性は欲張りで、仕事と育児を両立させ、パートナーとの時間も自分の時間も全て楽しみたいと思っています。結婚しても子供が生まれても、仕事をしてる女性は多いですし、忙しい時間をやりくりして、プライベートの時間も充実させています。スポーツクラブに通ったり、友人たちと気軽にバルへ飲みに行くことも多いですし、夫婦の時間も大切にしていて、子供を両親に預けて、二人でディナーやコンサートに出かけたりと、積極的に自分たちの時間を楽しんでいます。スペインは家族の絆が強いので、家族と一緒に過ごすことが多いです。
女性の場合、一番信頼できるのは、母親と、姉妹がいる人は、姉妹が多いです。親友であり、家族であり、一番のよき理解者が同性の家族です。そして、スペイン人女性は、他の国の女性に比べて、自分が女性であることを常に意識しています。例えば、服装でも、着飾るのが好きで、常に女性らしい格好をしていて、センスがいい女性が多いです。年配の女性でも、普段着にワンピースや、丈の短いスカートにヒールのある靴を履いている人も多く、いつまでも現役で、女性であ ることを忘れずに、若々しい人がたくさんいます。
また、離婚をした場合、例え相手が浮気をした場合でも、慰謝料はもらえません。そういう意味でも、仕事を持って自立した女性が多いのかもしれません。