世界各国の女性の学び、キャリアや働き方、結婚・出産、子育て、女性を取り巻く環境やライフスタイルについてご紹介します。
アメリカでは高校卒業後の大学教育では女性が優勢です。2012年度にアメリカの高校を卒業した人の約66%は二年制または四年制の学校へ進学したと報告されています。アメリカの高校の卒業率が日本と異なり地域や人種で差が見られるので、この数字は一概に日本とは比べられません。しかし、アメリカ全体で大学内における女性の占める割合は傾向が明らかです。
1970年代後半には大学における男女比は公立、私立大学とも女性が上回っています。これは女性が自分たちの母の足跡をたどらなくなった結果です。その理由はやはり1960-70年代にアメリカ国内で女性への教育の機会を広げる政府の命令が出たこと、そして当時に比べ女性が社会進出している割合が56%となり、それが定着しているからです。
昨年のフォーブスの記事によると大学内に占める男女のそれぞれの割合は2008年の調査では男性が43.62%、女性が56.38%とあり、女性が優勢の傾向は継続しています。また、男女に関わらず大学で教育を受ける利率が上がっているのは、社会の求めにもよります。日本と異なりアメリカでは、給与所得の上昇や有利な条件を求めて勤める会社を渡り歩くことが通常です。
そのため新しい技術革新、手法を身に付けた才能のある人材を企業が常に求めています。そのため、たとえ女性であっても年齢に関わらず大学での教育を受ける、またはさらに上位の学位を取得しようとするのです。女性がいつの年齢でも大学に通える、というのには単に女性の教育を政府自体が推奨しているからではありません。それを支える社会の仕組みもあります。それはこの次の項を参考にしてください。
「フォーチュン」誌が出しているアメリカの上位企業500社(フォーチュン500)の中の女性最高経営責任者数は21人で4.2%です。この会社の中にはおなじみのIT・ITプロバイダー会社に限らず、食品、軍事などさまざまな業種が見られます。日本での女性管理職は約1.4%なので、アメリカとの差は大きいです。
女性に関わらずアメリカでは雇用に関してはEEO(Equal Employment Opportunity)によって「人種、皮膚の色、宗教、性別(妊娠しているかも含む)、出自国、年齢(40歳以上の場合)、障害、遺伝情報によって差別されない」と保証されています。政府機関がこれを監督します。
また、Maternity Leave(産休)も連邦政府の労働省と各州法で定められており、12週間は新生児のための休業が認められています。また、パートタイムやフレックスの就業形態もアメリカでは一般化しており、子供の送り迎え、学校の行事には融通を利かせています。また、前述のフォーチュン500に名を連ねているYahoo社のCEOマイヤー氏は今年、自身が子供出産後は自宅勤務社員をすべてオフィス勤務に戻すよう会社方針を変え、子供の養育部屋を自分のオフィスの隣りにした、というニュースもあります。
アメリカでは一般的に女性が働く際に、障害となるものには対応が施されている傾向といえます。また、アメリカ国内で会社を所有している女性の数は780万人で、その88%は雇用者のいないいわば企業会社です。この数字を見る限りでは、女性の進出が目立ちますが、業種はヘルスケアと社会支援か関係が半数で、高収入の業種ではありません。企業数は多いのですが、まだまだ困難が多いといえるでしょう。
アメリカにおける結婚は日本よりも法的な影響が強いといえます。地方裁判所で判事、友人などの承認の下両者が結婚を誓い、事前に(3日以上前など)用意した郡役所からの結婚の許可書(Marriage License)に、判事に署名し再び役所に提出する、という流れが一般的です。
このように喜ばしい結婚の統計をたどってみるとアメリカの特徴も見えてきます。2010年センサス(人口動向調査)によると、2008年の結婚数は215万7000組、離婚数は84万4000組です。2組に1つが離婚しています。日本は2012年は結婚は66万8788組、離婚は23万7000組で35%なので、アメリカの離婚率は高いのは良く知られているとおりです。離婚の際に子供がいる場合、親権はどちらかに決定されますが、同時に親権を持たない親に対しても週末を過ごす機会を与えられます。
また最近の話題として、アメリカはどの州に対しても結婚許可書を請求できるため、いとこ同士や同性愛者の結婚は州法で定められているので、結婚後の居住地に影響を与えることもあります。出産については、最新のニュースが報じているとおりティーンエージャーの出産は1000人に24.4人、出産した女性の21.8%は未婚のティーンエージャーという数字が2008年のセンサスの結果にも出ています。
もう一つの傾向は出産後の職場復帰は収入によることです。日本では「マタハラ」が聞かれますがアメリカでは州によっては8週間のMaternity Leaveが認められています。その後、仕事を持っている女性の半数以上が子供が1歳未満でも仕事に復帰しているというデータがあります。収入の少ない(年5万ドル)家庭は託児費用が負担となり復帰しない場合があります。逆に高所得で共働きの家庭では復帰せずに子供との時間を大切にしたいため復帰しない、または復帰後辞める傾向があります。アメリカでの出産後の女性の動向は収入によるといえます。
アメリカでの子育てに対する意識とシステムは日本とはかなり異なります。病院での「出産講座」は、夫婦を対象にしているものがあるからです。出産当日もへその緒をパートナーが切ることもあるので、出産から男性が大きく関わっているといえます。また、異常がなければ翌日には退院するので、子育てはすぐにカップルの手に渡されます。Maternity Leaveの産後8週間以降から民間の託児所(チャイルドケアセンター)に子供を預ける人も出ます。
センサスの統計によると2011年には14歳以下の子供3270万人が何らかの託児施設を利用しています。アメリカでは法律により幼児虐待、養育放棄とみなされるため、小学生の「かぎっ子」は違法です。また、同統計にもあるように女性の社会参加が多いので、5人に一人が祖父母が子育てに関わっています。アメリカは学校から1マイル以上(1.6キロ)はスクールバスに乗ります。小学生以下はバス停に付き添わなければなりません。早退の時は安全上、保護者やあらかじめ学校に届けている身元引受人しか子供を引き取ることができないので、共働きなどの際は祖父母や親戚の力が必要になってきます。ですから女性だけが子育てに関わるという意識ではありません。そのほかに「オペア(Au Pair)」や「ナニー(Nanny)」を利用する家庭もあります。
アメリカは個人主義の社会なので祖父母は老後をそれぞれ楽しんだり、遠方の場合もあります。多民族国家のため、家計に余裕があれば多様な社会観を身に付けさせたい、自分たちの先祖の国の文化や言語に触れさせたいことからチャイルドケアと引き換えに学校の学費を負担するオペア制度の利用もあります。民間のナニー登録所で自分たちの子育ての考えにあった人物を雇うこともあります。このようなことから、アメリカでは子育ては夫婦で行うものという意識が強いですが、女性だけがすべきことではなく周りの力を借りていく、という柔軟さも見受けられます。
日本と同様に女性を取り巻く環境やライフスタイルは多様化しています。まずは結婚についてです。2011年のセンサスでは一度も結婚したことのない女性は62%です。また、1940年代から結婚をしていない女性が出産する割合が増え続けています。特に最新の政府発表によると25歳以下では実に60%も未婚の出産でした。34-39歳ではこの年齢層に比して割合は少ないので、これは従来の結婚ということが女性のライフスタイルではなくなり、女性として母親になるという若い世代の考え方かもしれません。同時に、シングルマザーであっても日本とは違いさまざまな子育ての方法があるからです。前述のチャイルドケアセンターの利用、親戚の協力もあります。
Head Startという低所得家庭に対する幼稚園以前の教育の機会を援助する政府のプログラムもあります。さらに、結婚の形態も変わってきています。オバマ大統領がLBGTへの人権擁護の姿勢を示しており、アメリカ女性のどの年代も同じような割合で存在している同性愛カップルも新たなライフスタイルになってきています。
また、アメリカには定年ということはなく、いつでもRetireできるのが一般的です。その際に日本の年金にあたるSocial Securityはアメリカの65歳以上の10人に9人が支給を受けており、老後収入の39%となっています。出生年代によって、受け取りが可能となる62歳になっても減額制度があるためIRA(Individual Retirement Account)を利用して個人拠出の減税対象の年金制度を利用する動きが近年見られます。しかし、2008年のリーマンショックにより、大幅に価値が下がってしまいました。これ以降、大手自動車会社が、終身支給だった退職者年金を一時払いに変更するなど、老後のライフスタイルに対する心配が大きいです。
もちろん従来どおり暖かい南部に移住する人もいます。かつての退職者7人に1が移住したフロリダ人気は変わりませんが、2010年には州をまたぐ移住は1.6%とアメリカの老後のライフスタイルは大きく変化しています。
コメントを投稿するにはログインしてください。